画像保存セミナー雑感(まとめない)
季節の変わり目で体調を崩したり、ばたばたとしているうちに前の記事から早ひとつきとなってしまいました。
あのシリーズは結構エネルギーが必要なので、つなぎということで参加してきたイベントの感想(まとめではない)でも書いておこうかと思います。
セミナーと題するにはちょっと講義未満の内容が多かったでしょうか。ポスター発表くらいの内容だったかなと。
全体を通して、デジものに関しては依然ケースの積み立て及び人材が足りておらず、現物ベースでやってきた現場 のひとたちは困っているし、これからも困るだろうなぁと思いました。
このあたりは数年前デジタルヒューマニティーズについて調べていたときに感じたことと非常に近かったです。デ ジタル化によって研究の可能性は大きく広がったものの、それはすなわちいままでのセオリーが通用しないものが発生したということと同義な わけで、欧米だと主にデータライブラリアンとかいう肩書の人たちが技術的な橋渡しをしているわけですが、様々な理由で日本ではそれが遅れ てしまっています(文系理系問題であったり、司書の専門性軽視、単純にエンジニアの母数が足りていない、他の仕事のほうが金になるな ど)。
暗澹とした気持ちになってきますけれども、人材育成は国内でいくつかある教育機関に期待することにしましょ う。それ以前に、意思決定者に技術が必要だと理解させるプレゼンが課題だろうと思います。
ただ、デジタルデータの長期保存に関して積み上げ段階なのは他国も同じだとIPRESSで も感じたので、そこは慎重に、自分達なりにやっていくしかなかろうと思います。成長期を過ぎた国として、いかに他国のがんばりを横目に老 獪に立ち回れるようになるかがあらゆる分野で今後の鍵になりそうです。
あと磁気テープについてはメリットだけでなくもう少しネチネチと考えたいところです。
Googleがどういう戦略で磁気テープによるアーカイヴィングを行っている のかはそのうち調べたいです。
規格の関係で結局3~4年 でマイグレーション(とハードの更新)しないといけないんだったら円盤でもなんでもいい気がしますが…。レシートくらいの感覚ですよね。 でも技術的に確立しちゃうと儲けがでにくくなるし企業として難しいだろうなぁと思います。最終的にはAdobeみたいにシステム利用料で稼ぐしかないのでしょうか。
批判的なことを書きましたが、国内の試行錯誤の現状を知ることができるというのは非常にありがたいことで、セ ミナーは今後も続けていっていただきたいと思っています。
いつか現物とデータで分けて開催できる日がくると良いなぁ。
以上、とりとめのない雑感でありました。
利用の多い図書館における資料保存とは 1
前回の記事では利用に特化するのもありでは、と書きましたが、実際には全く保存すべき資料を持たない図書館というのは想像しがたいものです。
地域の図書館、学校図書館、専門図書館などのそれぞれに役割と持つべき資料があり、常に買い替えが可能な状況ではない(というか多くの場合で困難である)からです。
現物利用と保存は基本的にはトレードオフで、周囲がどう考えようと図書館の現場にとっては大きな問題であると思います。
これから数回、ちょっと古いですが米国の図書館情報学の保存系科目で教科書として広く用いられてきた下記の文献を元に、利用の多い図書館における図書資料の保存について考えていきます。
Preservation: Issues and Planning (2011) Paul N Banks
https://www.amazon.co.jp/dp/B004K6MCUQ/ref=cm_sw_r_cp_awdb_c_BD4PBbBWQMR33
こちら教科書なだけあってベーシックというか、まずニーズとか目的を見据えて計画を立てましょうね、というところから始まるわけですが、日本の現場の状況的にどこまで役立つか疑問なのでそのあたりは機会があればということにさせていただいて、劣化要因と対策の整理をしたいと思います。
本書では利用の多い図書館の資料が劣化する要因について、大きく以下の三点に分けています。
・資料の置かれている環境由来の劣化
・利用や取り扱い時の破損
・もともとの材質や構造からくる劣化及び破損
次回は、この三つの要因の詳細と対策についてみていきます。
ガラス張りの図書館について
https://togetter.com/li/1267724
こちらのまとめが話題になっていたので見てみたら、微妙にツッコミどころが残されていて落ち着かないのでブログを書いてみることにしました。
以下、本のことは資料、と呼びます。
1.資料が劣化する要因は紫外線だけではなくて光すべて
紫外線が資料によくないと認識している人がこれだけいるのは喜ばしいことでありますが、自然光・人口光の別なく光が当たれば資料は劣化します。
文化財なんかでは、年間何ルクスで何時間まで、といった形で受ける光量を一点ごとに管理します。
紫外線が問題にされるのはそのエネルギー量の高さからであって、他の光が問題ないというわけではないのです。
2.壁面全体に資料が入る書架は日本では非現実的
よく引き合いに出されるヨーロッパあたりの図書館、すてきですが地震の多い日本では非現実的(又は、上層部の資料は落下して良いものとするしかない)でしょう。
そういう意味だけでは、悪名高い某図書館の偽物の本はコスト上現実的な解決策を取っているといえます。
3.ゾーニングという考え方
図書館等の建築物があまりうまくいっていないときの1つの原因として挙げられるのがゾーニングに対する無理解だと思います。
ゾーニングとはその名の通り、館内のエリアを目的別にしっかり分けましょうね、ということです。
まとめ中にもルーブルの例が出てきますが、自然光のしっかり入るところに置かれているのは大理石の彫刻とかブロンズとかの光に強いものではなかったでしょうか。
光に当たると劣化してしまうものは照度、温度や湿度に左右されるものにはそれらが管理可能なケースに入っているはずです。
簡単に言いますと、強い素材のものは明るく開放感があり、そのものの良さが発揮される外側の明るいエリア、繊細な素材のものは環境が管理できて虫などの外敵の入りにくい内側のエリアに置き、本当に重要なものは前室付きの収蔵庫に入れ管理する、というのがゾーニングです。
残念ながら日本でこれがうまくいっている図書館建築はとてもとても少ないです。
4.そもそもどこまで資料を保存するのか?
ただ、一般の図書館でどこまで資料を保存するのか、という問題はやはりあるかと思います。
背文字が全部焼けてしまうようなのは問題外とするにしても、多少色あせてしまっても市民の憩いの場としての機能を優先するというのも1つの考え方ではないでしょうか。
紙ものって一般の想像よりはるかに繊細で、本当はずっと空調が効いた薄暗い中にあるのが一番資料にとってはよいです。
しかし二十四時間空調なんて、日本では資金の潤沢な一部の私立大の一部の書庫でしかできていないくらいコストのかかることです。
すべての図書館に保存を頑張れ、というのはなかなかに無理難題かと思われます。
5.で、何が言いたいのか
なんだかとっちらかってきてしまいましたが、上記の色々な要因故に、ガラス張りの図書館というのが良いか悪いかというのは一概に言えないというのが結論です。
ゾーニングを考えて空間を構成して、適切な予算をもって維持管理されれば全く問題ないです。
または完全に保存を捨てて利用のみに特化した図書館とするのもなしではないでしょう。
ただそのどちらかでないなら、あまりオススメできることではありません。
この辺りが落としどころかなと思います。
※思いつくままに書いたので後でちょっと加筆するかもしれません!