ガラス張りの図書館について
https://togetter.com/li/1267724
こちらのまとめが話題になっていたので見てみたら、微妙にツッコミどころが残されていて落ち着かないのでブログを書いてみることにしました。
以下、本のことは資料、と呼びます。
1.資料が劣化する要因は紫外線だけではなくて光すべて
紫外線が資料によくないと認識している人がこれだけいるのは喜ばしいことでありますが、自然光・人口光の別なく光が当たれば資料は劣化します。
文化財なんかでは、年間何ルクスで何時間まで、といった形で受ける光量を一点ごとに管理します。
紫外線が問題にされるのはそのエネルギー量の高さからであって、他の光が問題ないというわけではないのです。
2.壁面全体に資料が入る書架は日本では非現実的
よく引き合いに出されるヨーロッパあたりの図書館、すてきですが地震の多い日本では非現実的(又は、上層部の資料は落下して良いものとするしかない)でしょう。
そういう意味だけでは、悪名高い某図書館の偽物の本はコスト上現実的な解決策を取っているといえます。
3.ゾーニングという考え方
図書館等の建築物があまりうまくいっていないときの1つの原因として挙げられるのがゾーニングに対する無理解だと思います。
ゾーニングとはその名の通り、館内のエリアを目的別にしっかり分けましょうね、ということです。
まとめ中にもルーブルの例が出てきますが、自然光のしっかり入るところに置かれているのは大理石の彫刻とかブロンズとかの光に強いものではなかったでしょうか。
光に当たると劣化してしまうものは照度、温度や湿度に左右されるものにはそれらが管理可能なケースに入っているはずです。
簡単に言いますと、強い素材のものは明るく開放感があり、そのものの良さが発揮される外側の明るいエリア、繊細な素材のものは環境が管理できて虫などの外敵の入りにくい内側のエリアに置き、本当に重要なものは前室付きの収蔵庫に入れ管理する、というのがゾーニングです。
残念ながら日本でこれがうまくいっている図書館建築はとてもとても少ないです。
4.そもそもどこまで資料を保存するのか?
ただ、一般の図書館でどこまで資料を保存するのか、という問題はやはりあるかと思います。
背文字が全部焼けてしまうようなのは問題外とするにしても、多少色あせてしまっても市民の憩いの場としての機能を優先するというのも1つの考え方ではないでしょうか。
紙ものって一般の想像よりはるかに繊細で、本当はずっと空調が効いた薄暗い中にあるのが一番資料にとってはよいです。
しかし二十四時間空調なんて、日本では資金の潤沢な一部の私立大の一部の書庫でしかできていないくらいコストのかかることです。
すべての図書館に保存を頑張れ、というのはなかなかに無理難題かと思われます。
5.で、何が言いたいのか
なんだかとっちらかってきてしまいましたが、上記の色々な要因故に、ガラス張りの図書館というのが良いか悪いかというのは一概に言えないというのが結論です。
ゾーニングを考えて空間を構成して、適切な予算をもって維持管理されれば全く問題ないです。
または完全に保存を捨てて利用のみに特化した図書館とするのもなしではないでしょう。
ただそのどちらかでないなら、あまりオススメできることではありません。
この辺りが落としどころかなと思います。
※思いつくままに書いたので後でちょっと加筆するかもしれません!