利用の多い図書館における資料保存とは 1
前回の記事では利用に特化するのもありでは、と書きましたが、実際には全く保存すべき資料を持たない図書館というのは想像しがたいものです。
地域の図書館、学校図書館、専門図書館などのそれぞれに役割と持つべき資料があり、常に買い替えが可能な状況ではない(というか多くの場合で困難である)からです。
現物利用と保存は基本的にはトレードオフで、周囲がどう考えようと図書館の現場にとっては大きな問題であると思います。
これから数回、ちょっと古いですが米国の図書館情報学の保存系科目で教科書として広く用いられてきた下記の文献を元に、利用の多い図書館における図書資料の保存について考えていきます。
Preservation: Issues and Planning (2011) Paul N Banks
https://www.amazon.co.jp/dp/B004K6MCUQ/ref=cm_sw_r_cp_awdb_c_BD4PBbBWQMR33
こちら教科書なだけあってベーシックというか、まずニーズとか目的を見据えて計画を立てましょうね、というところから始まるわけですが、日本の現場の状況的にどこまで役立つか疑問なのでそのあたりは機会があればということにさせていただいて、劣化要因と対策の整理をしたいと思います。
本書では利用の多い図書館の資料が劣化する要因について、大きく以下の三点に分けています。
・資料の置かれている環境由来の劣化
・利用や取り扱い時の破損
・もともとの材質や構造からくる劣化及び破損
次回は、この三つの要因の詳細と対策についてみていきます。